finland
Jouluaika Suomessa
フィンランドのクリスマス

私が1994-95年に経験した,「フィンランドのクリスマス(Joulu)とお正月 (uudenvuodenpäivä ) は,こんなふうにやってきて,こんなふうに去ってゆく」というお話です.


11月1日
フィンランド語では10月のことを「泥の月」(lokakuu),11月を「死人の月」(marraskuu)といいます.昼の長さは1日5分ずつ短かくなり,さらに天気が悪く太陽が顔を出すことはほとんどなくて,気が滅入る頃ですが,「死人の月」のはじまりとともにクリスマスシーズン(jouluaika)もはじまります.「クリスマス雑誌」というのが書店に一斉にならびます.これは,クリスマスプレゼントや飾りつけのアイデアがのっている本です.また,広告等もクリスマス用のものになり,商店では徐々にクリスマスセールがはじまります.
 
この日以後,アパートの部屋の窓にも電飾や蝋燭型の電灯がだんだんと点いてきます.郵便局ではクリスマス郵便の受付期限等が表示されます.国内のクリスマス郵便は一般の郵便よりも少し安くなっています.大学の学食等でも,テーブルに蝋燭がおかれます.
 
11月25日ごろ,クリスマスから4つ前の日曜日
以後クリスマスまでの各日曜日はキリスト教の祭日(Adventtisunnuntai)になり,教会で催しやコンサートが行なわれます.このあたりからクリスマスまで百貨店等は無休になり,「クリスマス商戦」が本格的になります.百貨店や商店街にはサンタクロース(joulupukki)が登場します.また最南部のヘルシンキあたりでもこの時期には午後4時ころには暗くなってしまうので,商店街にはクリスマス用の電飾がつけられます.商店や公共施設にはクリスマスツリー(joulukuusi)が立ちはじめます.12月はフィンランド語では「クリスマスの月」(joulukuu)で,世間はクリスマス一色になり,新聞にも「クリスマスまであと何日」という記事が毎日出ます.
 
12月6日,共和国独立記念日 (Tasavallan Itsenäisyyspäivä)
祝日で,休日です.大統領官邸では,著名人が招待されてパーティが開かれます.日本でいえば宮中園遊会のようなもので,その時の招待客の衣裳が女性雑誌の話題になります.町では広場で午後6時から式典が催され,たいまつを持った学生代表たちの入場,演説,国歌斉唱のあと,町の照明が一斉に消されて花火があがります.ヘルシンキではパレードもあるようです.
 
12月のいずれかの金曜日
各職場でクリスマスパーティ(pikkujoulu,「小さなクリスマス」)が催されます.職場で小さなパーティをして,この時にクリスマスワイン(glögi)という暖かい飲み物を飲みます.その夜は,レストラン,パブ,そしてサウナ(!)と,朝まで宴会が続きます.日本でいえば忘年会のような感じですが,職場単位で宴会をするのは年に1回,このpikkujouluだけです.
 
Pikkujouluに合わせて,私のいた研究所でも,研究員たちの子供たちの描いた絵や「サンタさんへの手紙」なんかで廊下や休憩室等が飾りつけされました.
 
12月19日ごろ
学校は約2週間の冬休みに入ります.フィンランドの大学は8月−12月の秋学期と1月−5月の春学期の2学期制で,12月と5月は試験です.6,7月は夏休みです.
 
このころ,町には家庭用のクリスマスツリーを売る露店が出ます.こちらのツリーは松の木(本物の木です)で,高さは2mくらいです.
 
12月23日夜
フィンランドが国をあげて「サンタの故郷」を宣伝していることは,日本でもかなり知られていますが,この夜には北部の町Rovaniemiで「政府公認サンタ出発式」がありニュースでも流れます.サンタは,ラップランド(北欧の最北部)のKorvatunturiという山に住んでいるそうです.
 
このころが冬至になるわけですが,私のいたTampereでは,日の出9時44分,日の入3時2分になります.北欧では冬至は「これから日が長くなる」という意味のキリスト教伝来以前からのお祭りで,後にこれが外来の習慣であるクリスマスと結びついたといわれています.
 
12月24日,クリスマスイヴ(Jouluaatto)
この日は商店は12時か1時くらいまで営業します.店が閉まると,町から一斉に人が消えてしまいます.
 
この日の夜,お墓まいりをして,ろうそくをともします.一般に,この夜は大騒ぎすることはなく,家族とともに家庭料理をつくって祝います.地方から都会に1人で出てきている人たちも親元へ帰省します.私も「クリスマスには日本に帰るのか?」とよく聞かれました.
 
12月25日,クリスマス(Joulupäivä)
キオスクやファーストフードも含めて,商店は一部のガソリンスタンドを除いて全部閉まり,ごく一部の列車をのぞく交通も全て止まります.
 
フィンランドでは,jumalapalvelu(「クリスマスミサ」というのでしょうか,英語ではchurch serviceと書いてあります)は朝6時か7時からはじまります.ふつうのフィンランド人が教会にいくのは1年でこの日だけだそうです.この早朝のミサは伝統的様式にのっとったものだそうですが,普通はその後10時ころから「家族連れ向け略式ミサ」があるそうです.
 
フィンランド南部では,曇や雨・雪で0℃前後というのは秋の天気で,クリスマスごろには晴が多くなって−10℃以下になるのが普通だそうですが,1994年は秋の天気が続き,雨がふりました.その後も29日は雪でしたが,30日には気温が+4℃にあがり,雪が融けてしまいました.
 
12月26日,ボクシングデー(Tapaninpäivä)または第2クリスマス(2. Joulupäivä)
この日も祝日で休日です.商店,交通は昼頃から動きはじめます.
 
27日から大晦日までは平日ですが,このあたりに休暇をとる人も多いです.もちろん,休暇をとらずに出勤する人もいます.
 
12月31日,大晦日(uudenvuodenaatto)
私は,「年越しそば」を作るべく,「ダークスパゲッティ(tummaspagetti)」を買ってきて,こっちに来た直後に買った「ヤマサのダシ」とかつおぶし,さらにしょうゆのスープでねぎ(purjo,太さは日本のものの3倍)をいれて食べました.けっこうそれらしい味になりました.
 
ところで,上にあげた食材のうち,だしの素とかつおぶしは普通のスーパーマーケット等には売っていませんが,しょうゆ(soijakastike)は人気のある調味料で,学食等のテーブルにも必ずおいてあります.食堂で皿いっぱいの米飯(インディカ米)にしょうゆを大量にかけて食べているフィンランド人をよくみかけます.
 
町には花火屋が出ます.「本場中国製」と宣伝しています.そして,午後3時ころ暗くなってくると,あちこちから花火や爆竹の音が聞こえてきます.夜には町に人々がくりだし,町は酔っぱらいが徘徊し,あちこちから酒臭いにおいと火薬のにおいがしてきます.年がかわると,「新年おめでとう(Hyvää uutta vuotta!)」のあいさつとともに町は大さわぎ,花火は最高潮 になります.独立記念日のところにもあったように,フィンランドでは,花火は冬の楽しみです.なぜならば,夏は夜暗くならないからです.
 
町では0時から市主催の行事があり,花火や国歌斉唱等があります.また,1995年のこの瞬間からフィンランドは欧州連合(EU)の一員となりました.国会議事堂前ではEUの十二星旗があがり,国境の税関等では表示のはりかえが行われました.EU加盟にともない,関税を中心に税制に大きな変更があり,物価が大きくかわりました.スーパーは安くなったものを「Euro価格」といって宣伝していますが,学食のコーヒーは約20円も値上がりしました.
 
この日は,その行事にいこうとおもっていたのですが,知りあいの日本人が,フィンランド人の友達の家にいくというので計画変更してついていきました.年がかわるときにベランダに出ていると,あちこちで花火があがっていて,ベランダから爆竹を投げている人もいました.
 
ここの家で,「新年の占い」(uudenvuodentina)をやりました.これは,台所用品の玉じゃくしのようなものをコンロにかけて,その中で馬蹄型の錫をとかします.そして,とけたところで水のなかに落して,そのかたまった形で運勢をみます.私のは,丸太のような単純な形になりましたが,これは金運にめぐまれるという「吉」だそうです.
 
この年の大晦日は,融けた雪がまた凍ってその上に雪がふったため,つるつるの氷の上に粉をまぶしたようになり,暖かい大阪育ちの私は何度も転びました.
 
1月1日,元旦(uudenvuodenpäivä)
祝日で,休日です.夜中にさわいだので,この日はみんな寝ているそうです. 私もそのあとその日本人とうちのアパートで朝(明るくなるのは10時ごろ) まで雑談していたので,元旦は1日寝てました.
 
1月2日
社会は平常運転になります.学校は次の月曜日からはじまるのですが,1995年は1月2日が月曜日だったので,さらに一週間休みでした.
 
1月6日,顕現祭(Loppiainen)
キリスト教の祭日で,休日です.日本でいえば「七草」というところで,この日にクリスマスの飾りつけをかたづけ,お祭シーズンはおわりになります.
 
急速に,日が長くなります.昼の長さは夏と冬とで14時間変化するのです.さらに日が長くなり,雪が明るく光る2月は「真珠の月」(helmikuu)といいます.日が長く,晴れが多くなり,「泥月」や「死人の月」にはなんとなくぼーっとしていた人々も急に元気になって,本格的なウィンタースポーツのシーズンになります.


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