finland
Yötön yö
白夜

「白夜」とは,高緯度地方での,夏至前後の暗くならない夜のことを言います.私が住んでいたTampere(北緯61.5度)では,北極圏には達していないので夏至の日にも一応太陽は沈みますが,約2カ月の間,暗くならない夜が続きます.Tampereでは夏至の日の日の入りは午後11時15分(夏時間)です.

不思議なことに,「白夜」に相当する言葉はフィンランド語にはありません.表題のyötön yöとは,yö = 夜,-tön = 〜がない,という意味で,「夜のない夜」という意味ですが,こういう言い方はフィンランド人もするそうです.これに対して,冬の太陽が出ない日に対しては,ちゃんとkaamosという言葉があります.

1日には,昼があって,夜がある,と思っている人には,白夜は大変不思議な現象で,極限の土地にやってきたという実感を感じさせてくれます.太陽は東から出て西に沈むと私たちは習いましたが,夏の高緯度地方では太陽は北から出て,空を一周回って北に沈みます.私のいた研究室は北向きだったので,夜10時を過ぎると西日ならぬ「北日」が入りました.

この写真は,Savonlinnaで開かれたオペラフェスティバルを見に行った帰りに北の方向を写したもので,大体夜半ごろのものです.撮影したのは7月22日で,白夜の季節のほぼおわりのころなので,このようなシルエットになっています.しかし,夏至の日だともっと明るい景色になり,雲の具合によって空の色がさまざまに変わります. yotonyo-1
ところで,日本では,南向きの部屋が日当たりが良いという理由で好まれますが,北欧では同じ理由で西向きの部屋がよいとされています.西日が長い時間入る部屋が好まれるのです.私が住んでいた部屋にも西側に大きな窓がありました.逆に不人気なのは東向きに窓のある部屋です.早朝(というよりもほとんど夜中)から朝日が入り込んでまぶしいからです.
最後にこの写真は,ヨーロッパ最北の地とされるNordkappで撮影されたものです.この岬は北緯71度を超える高緯度にあり,また北に向かっているため,夏場は太陽が西から降りてきて,真夜中に「北中」し,そのまま東へ上がっていくという「真夜中の太陽」を見ることができます.この写真は残念ながら「真夜中の太陽」ではなく,午後9時ころの美しい夕(?)日です. yotonyo-2
[2004. 1] 私の公的ウェブサイト「写真集」に,2003年6月に北欧を訪れた際の白夜の写真を掲載しています.こちらもよろしければごらんください.


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