finland
adjektiivi
形容詞

私は言語学の専門家ではないので正確なところはわかりませんが,フィンランド語では名詞から形容詞をつくるのが非常に自由にできるように思います.このときに用いられるのが,-nen, -llinen, -lainenという語尾です.

-nenは,形容詞の語尾によくついていますが,それと同時によくフィンランド人の姓に現れる語尾です.フィンランド人の姓は,物を表す言葉に-nenや-laがついたものがよくあります.-laは「場所」を表す語尾で,例えばravinto「食べ物」に対して ravintolaは「食堂」となります.おそらく,何かの自然物のそばに住んでいる人たちや何かの製品を作る人たちが,〜nenや〜laという姓でそうよばれるようになったのでしょう.日本で知られている人でいえば,F1レーサーの Mika Häkkinen(häkki = 「籠」)やスキージャンパーの Janne Ahonen(aho = 「森の中の空間」)という人がいます.他にも Virtanen(virta = 「流れ」),Järvinen(järvi = 「湖」),Metsänen(metsä = 「森」)という,フィンランドぽい姓の人がたくさんいます.

一方,-llinenは名詞から直接形容詞を派生させる語尾です.例えば,ikkuna「窓」に-llinenがつくと ikkunallinen「(部屋などで)窓のある」という意味になります.また,それがさらに名詞に変わったilta「夕方」→ illallinen「夕食」という言葉もあります.

また,-lainenは「集団」を表す言葉について,「集団の」という形容詞や「集団のメンバー」を表す名詞を作る語尾です.国につくと国民の意味になり,Japani「日本」から japanilainen「日本人」という言葉ができます.-lainenの使い方は非常に幅広いものです,例えばkoulu「学校」につけると koululainen「生徒」という言葉ができます.また,どんな地名にもつけることができ,Tampere→ tamperelainen「タンペレの,タンペレ市民」ということもできます.さらに組織名にもつけることができ,VTT→ VTT:lainen「VTT(国立研究センター)職員」という言い方もできます.

おもしろいのは,これらを使って自由に疑問詞を作れることです.例えばväri「色」から minkävärinen「何色?」という言葉ができたり,maa「国」から minkämaalainen「何国の?」「何国人?」という言葉ができます.読者の井出様にうかがったお話ですが,犬について獣医さんに電話すると,minkäikäinen「何歳の?」(ikä「年」),minkäkokoinen「どのぐらいの大きさの?」(koko「サイズ」),minkärotuinen「何種の?」(rotu「(血統などの)種」)といった表現で尋ねられるそうです.

このようにして,フィンランド語では,英語や日本語なら前置詞や助詞などをつかった句で表現する複雑な意味を,ひとつの単語で表すことができます.また,場所を表す前置詞や助詞も語尾の変化で表されるので,フィンランド語では,各単語の長さが均等で,見た目に非常にすっきりとした文章ができあがります.こういう文を見ると,いかにもフィンランド語らしいという感じがします.ただ,ひとつの単語の長さがどうしても長くなりますから,テレビで放送している外国映画の字幕では,画面の端から端までで1単語,ということもあります.