finland
Viisitoista pakkasastetta
15度のpakkanen

Pakkanenは,フィンランド語では非常に重要な単語です.この言葉の意味は「氷点下の寒さ」です.単なる「大変な寒さ」ではなく,「気温が摂氏0度以下である状態」という客観的な言葉です.

以下,pakkanenにまつわるお話をいろいろ書いてみます.


一般に-nenという言葉が合成語をつくるときは-s-という形になります.フィンランド語ではpakkas何とかという名詞がたくさんあります.その1つが題名にしたpakkasasteで,asteは「〜度」のことです.フィンランド語では「マイナス15度」のような言い方はせず,"15 pakkasastetta"すなわち「15度のpakkanen」のように言います.


私が滞在していた1994-5年の冬は暖冬でしたが,それでもTampereのような南部の町でも氷点下15度以下に下がる日もありました.そんな寒い日のある夕方,町でおばさんがこんな ことを言っているのを耳にしました.

Pakkanen nousee koko ajan.

これは直訳すると「Pakkanenが刻一刻と上がっています.」となります.これの意味するところは,「現在氷点下で,しかも気温がどんどん下がっている」ということです.Lämpötila laskee.(「気温が下がっている」)という言い方もありますが,日常会話ではpakkanenを使った言い方の方が普通だそうです.


私が滞在していたころ,フィンランド語のラップ音楽で,こんな歌がよくラジオ で流れていました.

Pakkanen, josta suomalaiset tykkää,...
(Pakkanen, フィンランド人の好きなもの...)

私にはここしか聞きとれなかったので,この歌の真意はよくわかりません.しかし,確かにフィンランドの冬は厳しいですが,こっちの人はそれを楽しんでいるようにも思えます.

フィンランドの町であちこちに目につくのが「温度計」です.ビルの壁や塔などで,街頭時計のあるところには必ず一緒に温度計があるといってもいいでしょう.デジタル表示で,何秒かごとに時刻と気温の表示がきりかわるものもあります.

また,家庭用の温度計も普及しています.外気用と室内用の区別があり(あとサウナ用もありますが),外気用は氷点下50度まで計れます.私が住んでいたアパートの窓の外にもありました.室内は常時暖房していますので,朝起きた時に外が寒いか暖かいかはわかりません.そこで温度計を確認して,外出用の「装備」を決定するわけです.

家庭用の外気用温度計の中には,一日の最低気温を記憶しているものもあります.こうなると,何度まで気温が下がるかを楽しみにしているような気もします.子どものころ,台風が来るとなんとなくわくわくしていたようなものでしょうか.
(注:私の実家は大阪市の中心部の高台の上にあり,台風はしばしば来るものの洪水等の心配はあまりなかったので,こんなのんきなことを言っていられたのでした)