英語の時間に,"He closes a window." = "A window is closed by him."といった能動態・受動態の書き換えの練習をしたことがあると思います.しかし,この2つの文が同じ意味だというのもヘンな話で,現実には「閉める人」に関心があるのか「閉められる窓」に関心があるのかという意味の違いがあります.
さて,フィンランド語にも受身形(passiivi)と言われる形があります.ただ,英語の受動態と大きく違うのは,行為者を表す"by him"にあたる言い方がないことです.つまり,受身の場合は「閉められる窓」に関心があることがはっきりしているわけです.
また,受身の意味を表すのは「受身形」と「受動形過去分詞」の2つの言い方があります.「窓が閉められる」ことを表すのに
Ikkuna suljetaan.(受身形)
Ikkuna on suljettu. (過去分詞)
の2つの言い方がありますが,前者は「(これから)窓が閉められる」という動作を表し,後者は「窓は(過去において閉められたので)閉まっている」という状態を表します.
また,主語のない受身形もあります.これは,例えば
Minne ajetaan? 「どこへ行きましょうか」
(minne どこへ,ajetaan < ajaa 運転する)
Mennään kahville.「コーヒーにしませんか」
(mennään < mennä 行く,kahvi コーヒー)
のように用います.上のものは,テレビドラマでタクシーの運転手が客に言っているのを見ました.下のものは,フィンランド語教室の休憩の時に先生が言っていたもので,「自動詞の受身」になっています.このように,フィンランド語の「受身形」は,受身というよりも「誰の行為かを気にしない」つまり「無人称」という意味という感じがします.