フィンランド在住の読者の井出様から,「フィンランド独立と日露戦争」についてコメントをいただきました.ありがとうございました.
フィンランド人は日本に対して比較的いいイメージがあり,日本のことをよく質問されるし,日本人であるために不利益を受けた経験はありません.その点ではフィンランドは親日的といえるかもしれませんが,「フィンランドは親日国」と日本で言ったときのニュアンスと現地の状況はかなり違うと思います.
「フィンランドは親日国」と言う日本人は,ほとんどが日露戦争での日本の勝利を念頭に置き,フィンランドでは東郷平八郎を英雄視していると考え,それらを通して「尊敬すべき日本民族像」があるかのように錯覚しているようです.しかし実際は,日本と聞いて日露戦争を連想するフィンランド人はまずいないし,東郷平八郎などまるで知られていません.
では日本の良いイメージは何によってもたらされているかというと,主に伝統文化と科学技術,そして勤勉で礼儀正しいという国民性です.スポーツや芸術分野などでの活躍もあるでしょう.しかし,それらは他の国についてもそれぞれあって,日本が特別なわけではありません.
日本とアジア各国の差がよく分からないフィンランド人も多くいます.かなりの人が世界地図上で日本を正しく指させないし,中国や韓国と日本の地名や人名を混同することはざらで,それは一般の日本人の北欧諸国についての認識と大差ありません.たとえば今回のSARS騒動でも,(現時点では日本では患者が発生していないにもかかわらず)日本から来たとか日本に行って来るというだけで不安に思う人もいます(そうでない人もいますが).
要するに「フィンランドは親日国」というのは間違いではないけれども,フィンランド人にとって日本は際立って他と違う国ではないのであり,「親日」と言うなら「親韓」とも「親中」とも「親印」とも言えるでしょう.
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