フィンランド語の教科書を見ると,フィンランド語の数詞は次のとおりであると説明されています.
1 yksi | 6 kuusi |
2 kaksi | 7 seitsemän |
3 kolme | 8 kahdeksan |
4 neljä | 9 yhdeksän |
5 viisi | 10 kymmenen |
11〜19は1〜9に-toistaが,20, 30, ...は2〜9に-kymmentäがつき,これらを組み合わせて1〜99の数字が表わされます.
上を見ても,フィンランド語の数詞はかなり長いことがわかります.さらにこれらを組み合わせると,例えば89はkahdeksankymmentäyhdeksänとなり,100未満の日常的な数字であるにもかかわらず,とてつもなく長くなってしまいます.
そこで,会話体ではさまざまな短縮形が用いられます.とくに長いkahdeksan, yhdeksänはしばしばkaheksan, yheksänと発音され,kahdeksankymmentäをkahekskytと言うこともよくあります.フィンランドで暮らしていたときは,スーパーマーケットのレジで読み上げられる数字を聞き取ろうとがんばりましたが,これらの短縮形に慣れるまでかなり時間がかかりました.
あるとき,テレビで「縄跳びの数を数える」というシーンがありました.このように数字を速く言わなければいけない場合は,11(yksitoista), 12(kaksitoista)をそれぞれyytoo, kaatooと言うなど,さらに短い短縮形が用いられるようです.
また,上の表にない言葉で,数詞のように使う言葉があります.その中で日常よく出会うのが"pari"で,本来「2つ組,ペア」のことですが,数字の"2"の意味にも用いられます.去年(2003年)ひさしぶりにフィンランドに行ったとき,マクドナルドで買い物をしたら,"Pari euroa."(2ユーロです.)と言われ,この言い方を覚えていて助かりました.さらに,数詞とは異なりますが,"puoli"(2分の1,半)という言葉も覚えておく必要があります.容量を表わすとき,日本では"500cc"という言い方がふつうですが,フィンランドでは"puoli litraa"(半リットル)というほうが多いようです.
ところで,フィンランド語には,上のような普通の数字を表わす基数詞,「第何?」の記事でご紹介した「第1,第2,...」を表わす序数詞のほかに,「各数字そのものをさす名前」,あるいは「1番,2番,...」という「番号」を表わす数詞があります.1番 = ykkönen,2番 = kakkonen,3番 = kolmonenなどは,日常よくみかけます.
例えば,自動車レースの「フォーミュラ・ワン」は"Formula ykkönen"といいます.また,ヘルシンキの郊外に"Kehä I"という自動車道路1)がありますが,これも"Kehä ykkönen"と読みます."kehä"とは「輪」のことで,つまり「環状1号線」のことです.このように,「番号」はローマ数字で表わされることがよくあります.ビールのカテゴリー(アルコール度数に対応)もその例で,ラベルに書いてある"I"(低アルコールの「エール」)や"III"(通常のビール)はそれぞれykkönen, kolmonenと読みます.
また,等級(luokka)もこの数詞で表わします.例えば列車の「1等車」は"ykkösluokka"で,略して"1.lk"と書きます(-nenで終わる単語と別の単語がつながるときは,-nenが-sに変わります).
さらに,「お金の名前」もこの数詞で表わします.以前あった10マルッカのコインは,「10番」を表わす"kymppi"と呼ばれていました.これも,最初はレジでわからなくて困った言葉でした.
1) フィンランド政府道路局のサイトに写真が出ています.
ところで,フィンランド語では,数詞がかかる単語は「単数分格」という形に変化します.ここまで出てきたeuroa ( < euro),litraa ( < litra)や,「15度のpakkanen」の記事に出てきた 15 pakkasastetta ( < pakkasaste,「氷点下15度」)は,いずれも単数分格の形になっています.複数個あるものが単数形というのも変な話ですが,複数であることは数詞のほうでわかるからということでしょうか.まあ,ロシア語のように「1個は単数主格,2,3,4個は単数生格,5以上は複数生格」という複雑な方式よりは,ずっと単純です.
なお,「分格」という形については,このサイトの「分格」という記事もご参照ください.